zoi's blog

SaaSスタートアップの最も不安な時期の一つ

January 20, 2020

目次

そのSaaSスタートアップにペニーギャップを超えることはできるか

シードステージのSaaSスタートアップがMVPを作成したのち、実際に数社の優良顧客を受注するまでの期間は非常に大変です。

この時、あなたの作成するMVPは実際にはMVPでは無いことに気づきます。

単純に構築できる最小要件の製品を作成し、営業を開始すると当初想定していなかった必要要件に遭遇します。その必用要件を埋めるために急いで実装し、もう一度果敢に営業する。これを大体2ヶ月から2年繰り返す事になります。

MVPを構築している時のワクワク感は、この期間売れない事で一気に打ち消されます。

そしてこの期間は、無理やり知人に売ったりするケースを除き、本当に再現性のある販売が数社できるまで続きます。

買い手をリバースエンジニアリングする

最近のSaaSの創業者はプロダクトファーストな人が殆どです。彼らは、構築する製品とその価値について強い考えを持っていますが、GTMについて深く考えられていません。そこを見直す必要があります。

とは言えGTMとは非常に単純です。MVPを作り、営業を行い、潜在的な購入者への理解を深め、FBをプロダクトに反映し、次の見込み顧客への提案をより説得力のあるものにします。事実上、買い手をリバースエンジニアリングするという事です。

このプロセスは再帰的であり、過程で創業者は次の質問に答えられるようになる必要があります。

Q1. 解決しようとしている目下の課題はなんですか?

売れるためには、顧客の差し迫った課題を解決できるプロダクトである必要があります。課題が弱すぎるか抽象的な場合、営業は失敗します。

この課題を解決する製品パターンは、主に次の2つになります。

  • (1) 多機能化して包括的に課題解決できるようにする
  • (2) 販売を促進するキラー機能やユースケース(製品の楔)を見つける

一番だめなのは、課題の弱いユースケースを多数受け入れられるようにすることです。 とにかく強い課題を解決出来る必要があります。

Q2. 買い手は厳密に誰なのですか?

顧客の差し迫った課題が理解できるようになると、理想的な顧客のプロファイルが作成できるようになります。

ターゲットの会社規模・業種・業界・ユースケースを明確にしましょう。顧客社内のどのチームや肩書の人がエンドユーザーになりますか。

注意事項:エンドユーザーが技術や予算の意思決定をできない場合があります

その場合、以下の2つの対策が必要です。

  • (1) エンドユーザーを購買者のチャンピオンにする戦略の構築
  • (2) 製品機能や価格設定を実際の意思決定者の基準と予算に合わせて調整

Q3. 営業手法はどのようになっていますか?

リードはどのように生み出されますか?インバウンドですか、それともアウトバウンドですか?会社への突破口はどこですか?全ての利害関係者と予算の源泉を抑えましたか?購入の必要性を高めるイベントはありますか?何かをリプレイスする製品なのですか、それとも未対応の部分に対するソリューションなのでしょうか?(後者のほうが10倍楽です)

Q4. チームや製品はどのように進化する必要があるのでしょうか?

各イテレーションの過程で、創業者はチームに必要なスキルセットが整っているか常にチェックする必要があります。 営業でのFBを聞いて販売と製品のフィードバックループを維持できるように、創業者が売れる事がベストです。しかし、チームにそのDNAを組み込めると、物事が大幅にスピードアップできます。

どのくらいこの厳しい期間は続くのですか?

事業領域と販売サイクルに依存します。

スタートアップを対象(販売サイクルが1~2ヶ月)とするSaaSは通常6ヶ月でこの期間を終えられます。エンプラの場合は6ヶ月サイクルが殆どのため、より時間がかかります。これを考えると初期はSMBやスタートアップを中心に営業することが有効です。年に2回ではなく1〜2か月ごとに新しい仮説を商談でテストできるので、数倍の速度でイテレーションできます。

エンプラを狙う場合は、正面から全領域に売るのは大変すぎるので、特定のチームや業種に営業することが大事です。重要なのは、エントリポイントを見つけて、会社内で横展開していく事です。ボトムアップフリーミアムの採用も大いに役立ちます。

ペニーギャップを超えたら

ペニーギャップを越えると、実際の顧客からの学習がガンガン回るエキサイティングなフェーズに入ります。これは大きなマイルストーンであり、自信を強めるものです。しかしここでの問題は、その学習に持続性があるかということです。まぐれで売るのではなく、持続性を作る事が求められます。

次の重要なマイルストーンは、毎月の成長です。 ARRが100万ドルを下回る場合は月間20%の成長が、100万ドルを超える場合は10%を超える成長率がベンチマークです。ここまでくればシリーズAの達成です。


Kyle Mathews

SMB向けのマーケットプレイス事業を売却後、エンプラ向けのSaaSをやってます。元エンジニア:Ruby / Go / Nuxt / ReactNative